【湯島朝活タイムズWEB版】 生活密着型コラム誌 毎月1000部好評発行中です。

「伝統技術の工房」

経営者モーニングセミナーが開かれている天満宮梅香殿その3階に「神社史料修復所」という看板が出ているのを御存じの方もおられる事と思います。

私共はここで全国の社寺や美術館また個人の方より依頼されました文化財や美術品の修理をしています。文化財と言いましても多種多様で、絵画、彫刻、工芸品、書跡発掘された考古資料などです。それらの文化財を後世に永く伝える為の保存修理を行なっています。保存修理は現状維持を基本にした修理方法でこれ以上の剥落や劣化を押さえる処置でありその物の持つ雰囲気や時代を損なわない様に慎重に行う作業です。また、所有者の意向で全く修理跡を判らなくする修理方法もありますが、これは鑑賞陶器などに用いられます。また修理でも神輿の修理は新品のようにきれいにします。全体を解体して約千個の飾り金具を鍍金(メッキ)を施します。漆を塗ってある部分は全部塗り替えます。
修理期間は約八カ月から十カ月位要しますが、地元町会などいままで五基の修理をさせて頂きました。昨年は彫刻品「仏像」の修理依頼が多くありました。それらの仏様は造られてから三百年から八百年も過ごされていまして相当お疲れのご様子でした。仏様を解体し、虫食いの部分はきれいに、脆弱な部分は補強するなどして、全体を元のお姿に戻してお帰り頂きました。日本の文化財は紙・木・絹など脆弱な素材が多く、温度、湿度管理に難しい面があり、保存には細心の注意が必要です。また私共の修理は一刻の事ですが、それを永く保存していく事は大変なことです。しかし伝統的な技術の伝承や後継者の育成など、多くの課題もあります。美術館や博物館へお出かけの時には「修理」の手の部分もご覧いただければと思います。

上田墨繩堂  上田 誠