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蕎麦のこと、あれこれ

日本そば打ち名人会 林   喜 郎
「蕎麦・・五穀の代役」

五穀は農耕民族・日本人の主食であり、「五穀豊穣」は人々の願いである。

食・穀物を司る神を祀るとされる「稲荷神社」が全国各地に多くあるのが、そのことを物語っている。ちなみに、稲荷は(いね・なり=稲がなる)を意味すると言われている。

五穀には何が入るのか。時代によって異なるようだ。大昔、古事記、日本書紀では殺された神の体内から出てきた稲・麦・粟・豆・稗(ヒエ)としているが、江戸時代頃からは稲・麦・粟・豆・黍(キビ)が通説となっている。

植物学的に見て、稲・麦・粟・黍はイネ科、豆はマメ科に属しているのに対し、蕎麦は「タデ食う虫も好きずき」といわれるほど異色なタデ科に属し、牛、馬には食べさせるなと言われるほどのものである。

五穀が不作、特に稲が不作の時に蕎麦が登場する。

蕎麦は稲と同じように縄文時代から栽培されているが、記録として最も古いのは「続日本紀」に、奈良時代・養老6年(722年)の大干ばつの時、元正天皇(第44代・女帝・水田開墾に熱心だったと言われている)が「大麦や小麦と共に蕎麦を栽培しなさい」との詔である。以来、蕎麦は救荒作物として推奨されてきた。

また、修行僧が五穀絶ちの修行に入るときにも蕎麦は体力維持食として活躍する。

比叡山延暦寺に伝わる「千日回峰行」(7年間で千日、五穀絶ちで峻山を回峰修行するそうである)でも蕎麦とわずかな野菜しか口にしなかったと言われている。

ちなみに、今日では蕎麦は生活習慣病の予防に役立つ「健康食」として注目されている。


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